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相続人がいない場合に特別縁故者へ相続財産が渡るまでに大変な思いをされた事案についてご紹介致します。

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■まず、特別縁故者って何？
■判例の解説

　まず、特別縁故者って何？

相続人がいない場合（若しくはいるかどうか不明な場合）の大雑把な流れを以下に記述します。

１．	家庭裁判所が相続財産管理人を専任
↓↓↓
２．	相続人を捜索するための公告期間が設けられます。
↓↓↓
３．	相続人がいない事が確定した場合、相続財産管理人が亡くなられた方の借金などの債務を清算します。
↓↓↓
４．	残った財産の全部または一部は、特別縁故者が請求し、かつ家庭裁判所が認めた場合に分与する事ができます。

特別縁故者とは、以下のような者をいいます。

・	被相続人と生計を同じくしていた者
・	被相続人の療養看護に努めた者
・	その他被相続人と特別の縁故があった者

　判例の解説

それでは判例の解説に入ります。
～大阪高等裁判所　平成４年６ 月５日　決定～
特別縁故者に対する相続財産分与の申立人の地位の継承
～その内容を以下に物語にして説明します。～
登場人物や登場人物が考えた事等は、フィクションです。


今回の主人公は、仲良し従兄弟４人組です。
松吉さんと竹吉さんと梅吉さん・梅子さんは、いとこ同士で仲良し４人組です。
梅吉さん・梅子さんは、実の兄弟なのですが、松吉さんと竹吉さんを合わせた４人がまるで兄弟のように仲良くしていました。
大人になってからも住んでいる所が近くて兄弟のような関係がずっと続いていました。
彼らの親達は、不幸な事に皆早くに亡くなってしまった事が、そのような関係が続いている原因なのかもしれません。

ある年の冬に一番年長だった松吉さんが亡くなります。
松吉さんには

奥さんは、いません。
子供は、いません。
両親は、亡くなってます。
祖父母も亡くなっています。
兄弟もいません。

つまり、相続人となる人がいないのです。

そこで、竹吉さんと梅吉さん・梅子さんが特別縁故者として松吉さんの財産を分与して貰う為に家庭裁判所へ申し立てを行いました。

その申し立ての後になんと竹吉さんが亡くなってしまいます。
竹吉さんには、奥さんと子供（１名）がいます。
そこで、竹吉さんの特別縁故者としての地位を奥さんと子供が相続したと考えて家庭裁判所へ申し立てをしました。

ところが、家庭裁判所は、竹吉さんの特別縁故者としての地位は、竹吉さんが亡くなる事で、消滅したと判断しました。
困った竹吉さんの奥さんと子供と梅吉さん・梅子さんは、高等裁判所へ判断を求めます。

高等裁判所では

「特別縁故者としての申し立てをしている者が亡くなった場合には、その地位を承継したと考えるべき」

と判断します。

この判断には、松吉さん・竹吉さんもホッとされたのではないでしょうか。


～こうならないようにするには～
松吉さんが、従兄弟に財産を遺贈するとの遺言書があれば、裁判で時間やお金をかける必要がなかったのではないかと思われます。
今回のように自身に相続人がいない場合に遺言書がないと順調に特別縁故者と認められる場合にも相当な時間がかかります。
遺贈したい人がいるようでしたら、積極的に遺言書を作成されたら良いなと思います。


◆参考文献◆
学陽書房　相続判例２５０、２５１頁
特別縁故者に対する相続財産分与の申立人の地位の承継（本橋美智子）